Opera Report

オペラ公演、映像の感想など

2000.6.6 小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅠ モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」

Seiji Ozawa Ongaku-juku Opera Project Ⅰ

W.A.Mozart: Le Nozze di Figaro

 

東京文化会館 大ホール 18:30開演

 

アルマヴィーヴァ伯爵:オラフ・ベーア

Il Conte di Almaviva: Olaf Bär 

 

伯爵夫人:クリスティン・ゴーキー

La contessa di Almaviva: Christine Goerke

 

スザンナ:サリ・グルーバー

Susanna: Sari  Gruber

 

フィガロ:ジェラルド・フィンリー

Figaro: Gerald Finley

 

ケルビーノ:ルクサンドラ・ドノーゼ

Cherubino: Ruxandra Donose

 

マルチェリーナ:ジュディス・クリスティン

Marcellina: Judith christin

 

バルトロ:ドナート・ディ・ステファーノ

Bartolo: Donato di Stefano

 

バジーリオ:デニス・ピーターセン

Basilio: Dennis Petersen

 

ドン・クルーツィオ:アンソニー・ラチューラ

Don Cruzio: Anthony Laciura

 

バルバリーナ:藤田 美奈子

Barbarina: Minako Fujita

 

アントニオ:ジェームズ・コートニー

Antonio: James Courtney

 

サンフランシスコ・オペラ・オリジナル・プロダクション使用

 

塾長・指揮:小澤征爾

Director & Conductor: Seiji Ozawa

 

演出:デイヴィッド・ニース

Stage Director: David Kneuss

 

管弦楽小澤征爾音楽塾オーケストラ

Orchestra: Seiji Ozawa Ongaku-juku Orchestra

 

合唱:小澤征爾音楽塾合唱団

Chorus: Seiji Ozawa Ongaku-juku Choir

 

装置・衣装:ザック・ブラウン

Scenary and Costumes: Zack Brown

 

照明デザイン:高澤立生

Lighting Design: Tatsuo Takazawa

 

副指揮:北原幸男、横島勝人

ヴォーカル・コーチ:ピエール・ヴァレー

合唱指揮:江上孝則

コレペティトゥーア:小林万里子、小助川真美

演出助手:小澤征良

技術監督:小栗哲家

舞台監督:飯塚励生

 

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当時小学生だった私が、生まれて初めて見た生のオペラ。そのせいもあってか、全てが美しく、生々しい印象が残っている。初心者にはもってこいのオーソドックスで豪華な舞台、ほとんどの歌手が海外勢ということで、ビジュアル的にも初体験にはよかったのではないだろうか。

 

この舞台が良かったせいで、私は今でも”オペラ”の呪いにかけられたまま、抜け出すことができずにいる。

 

20世紀末はオペラDVDが出始めた時期で、家庭で観ることができるタイトルがじわじわと増えていった。もちろん私も数タイトル観て予習をして臨んだが、今と比べるとその数は雲泥の差。≪フィガロ≫といえばベーム指揮のオペラ映画と、ショルティ指揮パリ・オペラ座、ストレーレル演出の画質の悪い映像ぐらいのものだった。

 

実際舞台に触れてみると、目の前で繰り広げられる目くるめく扮装劇、グローバリズムが始まりかけていた20世紀末からはかけ離れた、なんたるエキゾチシズム!(その頃の私からすると18世紀の音楽劇は異国情緒あふれるものに感じたものだ)。まぁ、このキャストを見てもわかるように、オペラこそがグローバリズムを凝縮したような市場なのだが、年若き自分にはそんなことは分からず、ひたすらに西欧いにしえの文化の香りに酔ったのだった。

今振り返ってみると、MET常連を中心とする名手が揃っていた。小澤氏がウィーンのオペラの監督になるはるか前のことである。ベーアは言わずと知れたリートの旗手であるし、フィンリーは本国英国で今やワーグナー作品の主役で人気を博している。ドノーゼもロッシーニ作品の主役でDVDが出ているし、クリスティン、ラチューラは90年代のMETを支えた名脇役で、映像作品も数多い。

 

”音楽塾”ということで、オーケストラや合唱団に若い音楽家を据え、音楽教育を目的に開催していたのだろうが、客席でも少数ながら私のような”塾生”が生まれていた。若い観客を育てるということはこの事業の主目的ではないであろうが、小澤氏は各地で小さな聴衆を増やす試みを数多く行っている。それをはなれていても、”本物”をやるということは新たな観客を増やすことにつながるということなのだろう。そもそも、観に来てくれないことには何もならないが・・・。